ご 挨 拶

 第43回茨城県母性衛生学会学術集会を開催させていただく運びとなりました。開催にあたりまして多くの方々のご支援とご協力に心から感謝申し上げます。  メインテーマを“周産期のグリーフケア .赤ちゃんを亡くしたママにも途切れないグリーフケアを.”といたしました。妊産婦や乳幼児の健康を守る母子保健法では、流産、死産後の女性も支援対象に含まれます。しかし、母子保健を担う医療者、行政職者であってもその認知が行き届いているとは言い難い現状があります。これは、グリーフにある当事者、家族への支援に困難や苦悩していることも一因ではないでしょうか。臨床で助産師をしていた頃の私自身もそうでした。また、18年前より茨城県で“玉響(子どもを亡くした親の会)”を開催している関係で、当事者の方はもちろんのこと、支援者からの声を伺う中でも感じていることです。

 流産、死産を経験した女性への調査(厚生労働省,2020)では、約84%が相談を希望していたにもかかわらず、約30%は誰にも相談できず、最も辛かった時期にうつや不安障害が疑われた人が約65%であったと報告されました。この事実を受け、2021年に全国の自治体に、地域の実情に応じたきめ細かな支援を行うための支援体制の整備が通知されました。茨城県でも自治体による「産前産後支援センター」や行政から委託を受けた茨城県産婦人科医会が「不妊専門相談センター」でグリーフに関する相談事業を行っていますが、皆さんはご存知でしょうか。支援体制はあっても、グリーフにある当事者がこのネーミングのセンターで相談が受けられるのだろうかと考えると、ハードルが高いように思えてなりません。

 昨今では、出生前診断で妊娠期にグリーフが予測される場合も少なくありません。出産や育児を前提とした「妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援体制」は充実されてきた反面、お子さんを亡くした母親は「妊娠期からグリーフ時期に切れ目ない支援」を受けることができているのだろうかと不安になります。たとえ、流産や死産であったとしても、その子が最初で最後となる子どもであり、目の前に生児はいなくとも、その子がいたからこそ母親となれたのです。地域に戻った母親は、どのような気持ちを抱え日常生活を送っているのか、復職はスムーズにできているのか、どのような支援を求めているのか、また、支援者は具体的にどのような支援を行い、切れ目のない支援を行うべく、連携体制はとれているのだろうか。シンポジウムは様々な立場の方からの話題提供をもとにディスカッションができることを期待しています。そして、あらためて、“途切れないグリーフケア”の意味を参加者一人一人が受け止め、実践に活かされることを切望しております。

43回茨城県母性衛生学会学術集会会長
茨城キリスト教大学 看護学部教授
渋谷 えみ

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